リーン開発は「開発における無駄をなくし、低コスト・短期間で顧客ニーズが満たされる製品を作る」手法です。
本記事では、リーン開発の意味や考え方を解説した上で、メリットやプロセスを説明します。コストや時間の無駄をなくしながら顧客ニーズに応える製品を開発したい際には、ぜひ参考にしてください。
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目次
リーン開発とは
リーン開発とは、「工程からできる限り無駄を除いて開発する手法」です。リーン開発の理解を深めるために、下記2つのポイントを掘り下げて解説します。
- リーンの意味
- リーン開発の考え方・思考
リーンの意味
「リーン」という言葉には、下記のような意味があります。
- (ぜい肉が取れて)痩せた
- 体が締まった
- 無駄がない
つまりリーン開発における意味は、「必要なものだけを残した無駄のない開発」と考えられます。
トヨタの「リーン生産方式(TPS)」から認識されはじめ、一般的にリーンスタートアップに使われている言葉です。
リーン開発の考え方
リーン開発における考え方の根本にあるのは、ビジネスで重要な資源となる「ヒト・モノ・カネ」の使い方にメリハリをつけた、バランスのよい経営です。
そして、ニーズの変化に対応しながらよりよい製品を作るべく、業務の見直しや方針の変更を繰り返します。
リーン開発の提唱者であるメアリー・ポッペンディークとトム・ポッペンディークは、著書「リーンソフトウエア開発 ~アジャイル開発を実践する22の方法~」において、リーンの原則は下記の7つであると記しました。
- 無駄をなくす
- 品質を作り込む
- 知識を作り出す
- 決定を遅らせる
- 速く提供する
- 人を尊重する
- 全体を最適化する
つまり、リーン開発なら無駄をなくした製品を速く提供できます。さらに、ニーズの反応や環境の変化に合わせて柔軟に調整を加えながら、高品質な製品にブラッシュアップできる点も重要な特徴です。
結果、顧客ニーズに応えながらも、会社の大切な資源である「ヒト・モノ・カネ」を無駄なく適切に使用できます。
リーン開発とアジャイル開発の違い
混同しやすい手法である「アジャイル開発」とは、重視しているものに違いがあります。
リーン開発は「顧客開発」とも呼ばれ、「構築・計測・学習」を繰り返しながら、結果は「どのくらい売れたか」が重視されます。
一方、アジャイル開発は「製品開発」と呼ばれ、「開発・設計・要求」を繰り返しながら、重視するのは「どれだけ進んだか」です。
わかりやすくまとめると、下記の通りです。
- 必要最小限の製品を提供して改善しながら顧客満足度を高めるのが「リーン開発」
- 短期間の開発・提供を繰り返して機能を追加しながら完成を目指すのが「アジャイル開発」
どちらも「不確実な要素が多い中で開発を進める」手法のため、混同しやすいものですから、最適な方法を選択するために違いを理解しましょう。
リーン開発のメリット
リーン開発のメリットは、主に3つあります。
- 無駄を削いで生産効率を向上できる
- 顧客サービスの品質が向上する
- 新しいビジネスモデルの開発につながる
無駄を削いで生産効率を向上できる
リーン開発の大きなメリットは「生産効率の向上」です。必要最低限の機能に抑えた製品開発は、下記の要素を削減します。
- 時間
- 費用
- 労力
結果、製品の開発スピードが上がり、短期間でのリリースを可能にします。
また、スピーディーなリリースは、新規開拓する市場において競合よりも優位に立てるため、先行利益が得られるという点もメリットといえるでしょう。
顧客サービスの品質が向上する
リーン開発における下記の特徴により、顧客サービスの品質が向上します。
- 生産効率の向上により時間やコストなどに余裕が生まれる
- 早期リリースにより顧客の声に素早く対応できる
調整や方向転換を繰り返しながら、リリースの度に新たな顧客の反応を得られるため、回数を重ねるごとに「より顧客ニーズに沿った高品質な製品」が出来上がります。
新しいビジネスモデルの開発につながる
リーン開発は、新しいビジネスモデルの開発につながる可能性があります。
時間やコストの無駄を省き顧客の声をすくい上げる環境が整った手法は、「新規事業の開発に取り入れやすい」ためです。
たとえば、前例がない分野の場合には、最初から顧客満足度の高い製品を作るのは難しいでしょう。しかし、リーン開発なら「構築・計測・学習」を繰り返して、「少しずつ顧客ニーズに合う製品を開発」できます。
そのため、他の手法よりも新規事業への挑戦がしやすく、新しいビジネスモデルの開発につながる可能性が高くなります。
リーン開発の流れ
リーン開発は、一般的に5つの流れで進みます。
- 仮説
- 構築
- 計測
- 学習
- 意思決定
①仮説
リーン開発が重視する「売れる製品」を作るために、顧客ニーズの仮説を立てます。
漠然とした状態で仮説をはじめると、考える人によって違うニーズを想定してしまうかもしれません。そのため、製品の目的や顧客のターゲットを明確化した上で、どのようなサービスが最適であるかを検討します。
②構築
仮説を立てたら、MVPを構築します。MVPとは、「仮説を検証するために必要最低限の機能だけを搭載した試作品」です。
仮説が間違っていた際のリスクを最小限にするため、低コスト・短期間で制作します。たとえば、MVPは下記のような形の試作品で構いません。
- 簡単なWebサイトやアプリ
- 動画
- パワーポイントのスライド
スピード感を持ってリリースすれば、それだけ早い段階で顧客の反応を得られます。
③計測
MVPが完成したら、製品のターゲットとする顧客に使用してもらった上でフィードバックを得ます。
計測の段階では、少人数に対してのサービス提供で問題はありません。「流行に敏感で、情報収集や分析などが得意な顧客」を厳選して、ニーズを計測します。
必要なデータを収集するほか、顧客が製品を使用する場に足を運んで「実際の使われ方を調査する」ことも有効な手段です。
④学習
計測で集めたデータを検証し、学習します。
方法は、トヨタが取り入れている「5回のなぜ」がよい手段です。
「5回のなぜ」は、MVPのマイナス要因について「なぜ良くなかったのか」という問いから、さらに「なぜ?」を繰り返して、解決したい本当の原因を突き止めます。
- なぜこのようなデータが出たのか
- なぜ機能を使ってくれなかったのか
学習の結果、仮説で正しいものは継続して、間違っていたものは変更や方向転換を実施します。
⑤意思決定
計測や学習で得た結果を元に、製品をどのようにブラッシュアップさせるべきか意思決定します。
MVPの機能を変更・方向転換する場合には、「構築・計測・学習」の繰り返しが必要です。
十分にプロセスを重ねて顧客ニーズが満たされた場合には、本番の開発に移る意思決定をしましょう。
リーン開発のフレームワーク
リーン開発で作られるMVPは、リーンスタートアップのフレームワークを活用すると効率的です。
リーンスタートアップとは、起業家のエリック・リースが自らの体験を元に体系化したスタートアップの方法論で、新規事業を実現するための組織運営やアプローチの方法として知られています。
新規事業の立ち上げ方について詳しく知りたい方はこちらの記事をご覧ください
【新規事業の記事の内部リンク】
また、フレームワークとは、「ビジネスにおける考え方や意思決定、戦略などの枠組み」を指します。そして、リーン開発のMVP検証に活用するフレームワークは「MVPキャンバス」と呼ばれます。
MVPキャンバスを構成する10の要素を、表にまとめました。
要素 | 詳細 |
---|---|
①仮説 | ターゲットとなる顧客の本質的なニーズ・課題を洗い出す優先度の高いものを仮説として記載するMVPに盛り込む必要最低限の機能が整理できる |
②目的 | 検証する目的やゴールを記載するゴールを明確にすれば求めた開発や展開につなげられる |
③方法 | どのように検証するかを決める(プロトタイプ/スモークテスト/コンシェルジュ/カスタマーリサーチ/オズの魔法使いなど) |
④データ・条件(KPI) | 検証に必要な条件やデータを決める具体的な条件を設定すれば詳細な検証結果が得られる |
⑤どのようなMVPを作るのか | 仮説から洗い出した必要最低限の機能をまとめる |
⑥コスト | 仮説検証に必要なリソース(費用・人員・工数など)を記載する |
⑦時間 | 仮説検証に必要な期間を記載する |
⑧リスク | 検証するにあたり予測できるリスクを洗い出す未然に防げるリスクは排除する |
⑨結果 | 仮説を検証して結果をまとめる |
⑩学び | 検証の結果から問題や反省点などを学び改善方法を記載する |
10の要素を埋めれば、開発目的のズレや検証の抜け漏れを防げます。
「最低限のリソースで顧客満足度を最大限に高める」ために重要なフレームワークなので、リーン開発の際に取り入れるとよい方法です。
まとめ
リーン開発なら、「構築・計測・学習」を繰り返しながら顧客満足度の高い製品が作れます。そのため、「新しいビジネスモデルを開発する際に向いている」手法です。
また、ニーズの変化に対応しながら顧客へ高品質なサービスを届けたい場合にも、リーン開発を検討するとよいでしょう。
リーン開発のメリットを十分に活かせるよう、プロセスやフレームワークの知識を深めてください。