空気が重くなるほどの緊張感―。システム開発の現場では、コストオーバー、納期の遅延、質の低下といった課題が多く浮上します。しかし、事前に見積もりの内訳を理解し、根拠に基づいて適切に作成できれば、未然にリスクを低減できます。

ただし、誰もが見積もりの各項目に十分な合理性があるのかどうか、一目で確信が持てるわけではありません。そこで、この記事では、システム開発の各項目の見積もり内訳と妥当性を明らかにし、正確な見積もりを行うためのチェックポイントを詳しく解説します。

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見積もり算出の方法

見積もり算出の方法は、以下が挙げられます。

見積もり算出法 概要 利点
トップダウン(類推見積) 類似プロジェクトを基軸に、コストや工数をもとに見積もりを行う。 実際の事例をベースにするため、誤差が生じにくい。ただし、過去に類似のプロジェクトがない場合には適用できない。
ボトムアップ(工数積上げ) システムの完成形の想定から構成に必要なものに分割し、工数を積み上げて見積もりを行う。 抜け漏れが発生しづらく、開発前に必要な工数を洗い出すため、クライアントも金額を細かく把握しやすい。最も精度が高いが、時間がかかる。
係数モデル(パラメトリック見積) 特定の係数モデル(例:COCOMOモデル、ファンクションポイント法)を用いて工数を点数化し見積もりを行う。 担当者のスキルや経験に依存せず、機械的に見積もりを行える。データやサンプルが少ない場合、精度が低下する可能性あり。
プライスツーウィン法 クライアントの予算をベースに見積もりを行う。 予算超過を防げるが、工数に制限がかかり、品質も保証できない場合がある。

各見積もり算出法はシステム開発プロジェクトの規模や複雑性に応じて選択され、それぞれのメリットと活用シーンが存在します。

類推見積(トップダウン)

類推見積(トップダウン見積)とは、プロジェクトやシステム開発の初期段階で広く用いられる見積もり手法です。この手法は、過去の類似プロジェクトのデータや経験則に基づいて、新しいプロジェクトの規模やコストを予測するものです。

見積もりの精度は、利用する過去データの類似性と、見積もりを行う者の専門知識や経験に大きく依存します。そのため、細部に渡る正確な見積もりには向かず、大まかな予算設定や初期のプロジェクト計画策定に適しています。

係数モデル(パラメトリック)

係数モデル(パラメトリック見積もり)は、システム開発の見積もり方法の一つです。このアプローチでは、過去のプロジェクトデータや標準的な指標から導かれた係数を使用して、新しい開発プロジェクトの労力やコストを高い精度で予測します。

ただし、類似したプロジェクトが少ない場合や、新技術の導入などにより変動要因が大きい場合は、見積もりの精度も下がる可能性に注意が必要です。

ボトムアップ(工数積上げ)

ボトムアップ(工数積上げ)は、システム開発において各タスクの工数を細かく積み上げて総工数を算出する方法です。代表的な係数モデルには、COCOMOモデルやCOCOMO IIモデル、ファンクションポイント法などがあります。

ボトムアップの利点は、プロジェクトの実態に即した詳細な見積もりができる点です。しかし、多くの個別タスクを見積もる必要があるため、見積もりに時間がかかるというデメリットも存在します。

そのため、システム開発の複雑さを考慮した見積もりを提供する方法として、業界で広く用いられています。

プライスツーウィン法

プライスツーウィン法は、システム開発プロジェクトにおいて、クライアントの予算を基準に見積もりを行う方法です。このアプローチの最大の利点は、予算枠の範囲内でプロジェクトを実行し、予算超過のリスクを低減できることです。

しかし、予算に基づく見積もりのため、必要な工数や品質が予算によって制限される可能性があります。この方法は、特に予算制約が厳しいプロジェクトや費用対効果を重視する場合に適していますが、品質やプロジェクトの範囲が予算に影響を受ける点には注意が必要です。

見積り項目・内訳

システム開発の見積もり項目・内訳は、以下のとおりです。

要素 説明
要件定義費用 ビジネスとシステムの両方に対する高度な理解を持つ人材が細かく決めた要件定義の費用
設計費用 要件定義で決定した内容をシステムとして実現するための環境設計の費用。サーバーやプログラミング言語の検討などを含む
UIデザイン費用 ユーザーインターフェースのデザインを決める費用。視認性や操作性の良いデザインを考える工程
進行管理費用 開発スケジュールの進行管理に関わる費用。プロジェクトマネージャーの人件費などを含む
開発費用 システム開発に携わるエンジニアやプログラマーの技術費・人件費。システム開発にかかる費用の大部分を占める
テスト費用 各工程でシステムが設計通りに動作するかをテストする費用。単体テスト、結合テスト、総合テスト、受入テストなどを含む
導入費用 完成したシステムの初期設定や旧システムとの連携・移行にかかる費用
導入支援費用 システムの操作マニュアル作成や操作方法の説明会など、導入サポートに関わる費用
保守費用 導入したシステムの保守・運用にかかる費用。システムの監視や日常メンテナンス、障害の復旧などを含む

要件定義費用

要件定義費用は、開発者がクライアントと連携して、システムが満たすべき基本的な条件(機能や性能など)を詳細に決定するための費用です。これには利害関係者とのミーティング、ドキュメント作成、およびそれらの確認作業が含まれます。

取り組むシステムの複雑性や範囲に応じて、これらの作業に必要な時間とリソースが変動し、費用も前後します。

設計費用

設計費用は、システムの構築に必要な設計図を作成するためにかかる費用です。設計作業には、ソフトウェアアーキテクチャの設計、データモデル、ユーザーインタフェースのレイアウト、セキュリティやパフォーマンスに関する考慮など、多岐にわたる項目が含まれます。

設計費用の見積もりを行う際には、プロジェクトの規模、複雑さ、そして開発チームの経験や専門性に基づいて算出されます。

UIデザイン費用

UIデザイン費用は、ユーザーインターフェース(UI)のデザインを決める費用です。使用するツールやソフトウェアのライセンス費用、デザイナーのスキルセットや経験に応じた人件費、そしてプロジェクトの複雑性に基づいて変動します。

大規模なシステムにおいては、多くのユーザータイプや複数のデバイス対応を要するため、デザインの複雑性が増し、それに応じて費用も高くなる傾向があります。

進行管理費用

進行管理費用は、開発スケジュールの進行管理に関わる費用です。プロジェクトマネージャーや進行管理ツールの使用料金、定期的な進捗報告会議や調整会議のための経費などです。

開発プロセスを効率化し、品質を保ちながら期限内にプロジェクトを完遂するためにも不可欠な投資として考えましょう。

開発費用

開発費用とは、システム開発に携わるエンジニアやプログラマーの技術費・人件費のことです。開発費用の大半を占めるコストで、開発チームのスキルレベルや経験、採用する技術スタック、システムの複雑性などで前後します。

実際の開発現場では、しばしば見積もりが変動するため、追加の費用が発生することもあります。したがって、予測できない要素に対する余裕をもたせた見積りを作成し、クライアントと密接にコミュニケーションを取りながら開発を進めることが好ましいでしょう。

テスト費用

テスト費用は、開発されたシステムが要求された品質や機能を満たしているかを確認するための費用です。単体テスト、統合テスト、システムテスト、受入テストなど、開発プロセスの各段階で行われる評価活動の範囲と複雑さに応じて前後するものです。

高リスクな機能ほど多くのテストリソースが割り当てられるため、費用は増加傾向にあります。また、開発後期に発見されたバグの修正費用は莫大になることから、早期のテスト段階での不具合検出と解決に投資することが長期的なコスト削減に繋がります。

購入・導入・導入支援費用

購入・導入・導入支援費用は、システム開発時の見積もりにおいて、必要なソフトウェアやハードウェアのコスト、それらを企業の現存する環境に組み込むための費用です。また、過程で発生するサポートやトレーニングのための出費も含まれます。

さらに、従業員が新システムを効率よく利用できるようにするトレーニング費用や、継続的なサポートを受けるための定期的な支払い(サブスクリプション料金やメンテナンス契約料金など)も包含されることが一般的です。

保守費用

保守費用は、導入したシステムの保守・運用にかかる費用です。定期的な保守・サポート、ソフトウェアの更新やバグ修正、セキュリティ監視と対策、ハードウェアのメンテナンスや交換といった継続的なコスト、障害の復旧などを含みます。

開発済みのシステムに対して、見積もられた保守費用は、提供されるサービスの質や継続性を確保し、システムの価値を維持するための長期的な投資です。

見積もり内容を精査するポイント

システム開発の見積もりでは、予期せぬコストの発生を防ぐために、提案内容を注意深く精査することが重要です。具体的には、以下のポイントを確認しましょう。

  1. 作業範囲対象と対象外の明確化・責任範囲
  2. 開発言語・開発手法・技術
  3. 開発・ネットワーク環境
  4. プロジェクト期間・工数・納期
  5. ハードウェア・ソフトウェアの購入費用
  6. テスト
  7. 納品物・納品検収方法・検収条件

作業範囲対象と対象外の明確化・責任範囲

見積もりを精査する際の重要な点の一つに、作業範囲の明確化があります。また、作業範囲をはっきりと区切ることは、責任範囲の明確化にも繋がるものです。

例えば、開発途中での要望の追加や変更が生じた際、追加料金やスケジュールの調整も発生する可能性があります。その際、クリアな作業範囲と責任範囲が示されていれば、交渉もスムーズに行える基盤となるでしょう。

開発言語・開発手法・技術

見積もりの際、開発に使用される言語や技術も非常に重要です。開発言語や開発手法、使用する技術はプロジェクトの複雑さ、開発時間、必要なリソースなどに直接影響を与えるからです。

例として、最新のフレームワークを使ったアジャイル開発は、柔軟性が高く素早いイテレーションも可能です。しかし、そのための専門知識や経験がチーム内に必要となりますし、予備知識が少なければより時間もかかる可能性もあります。

システム開発の見積もりでは、それぞれの言語や技術、手法が持つ特性を理解し、プロジェクトの要件に最も合致するものを選ぶことがコストと時間の節約につながります。

開発・ネットワーク環境

システム開発の見積もりをする際、開発・ネットワーク環境の精査も必要です。開発するシステムの性質やサイズ、使用する技術、およびクライアントの既存環境への適合性に大きく左右されるためです。

環境要因を正確に評価しないと、後に追加費用が発生したり、システムのパフォーマンスが不十分になったりするリスクがあります。そのため、様々なシナリオを想定してネットワーク環境を検討し、リアルな見積もりを作成することが求められます。

プロジェクト期間・工数・納期

システム開発における見積もりの中で、プロジェクト期間・工数・納期では、実際のプロジェクト管理経験に基づいた現実的な見積もりが必要です。

項目 説明
プロジェクト期間 プロジェクトの開始から完了までの時間
工数 プロジェクトに必要な作業の総量
納期 プロジェクトの成果物やマイルストーンの期限

見積もり精査では、それぞれが現実的かどうかの妥当性を検証します。例えば、類似のプロジェクトを経験しているか、利用する技術の新しさやチームの習熟度、リスク管理の具体的な策を考慮に入れているかなどです。

ハードウェア・ソフトウェアの購入費用

ハードウェア・ソフトウェアの購入費用の精査時には、提案されたハードウェアがプロジェクトの要件に見合っているか、または過度に高性能でコストを不必要に増加させていないか検討する必要があります。

例えば、特定のアプリケーションサーバーに対するライセンス費用が見積もりに含まれている場合、そのアプリケーションがプロジェクトで実際に活用される必要があるものなのか、あるいはよりコスト効率の良い代替品が利用可能か等の詳細な調査が不可欠です。

同様に、ソフトウェアについても実際に必要なライセンス数や種類、またはオープンソースソリューションを利用することでコストを下げられる場面がないかも考慮しましょう。

テスト

テスト工程では、予想外の問題に遭遇することも少なくないため、リスク管理として余裕を持たせた時間を見積もりに含めることが賢明です。予期せぬバグに対応することで、プロジェクトの遅延を防ぎ、品質を保証することに繋がります。

特に新しい技術や複雑な機能を含むシステムでは、テストにさらに時間がかかる可能性もあります。費用が増大しすぎないよう、時間と資源の割り当てを適切に行うことがプロジェクト成功の鍵です。

納品物・納品検収方法・検収条件

システム開発の見積もりを精査する際、納品物、納品検収方法、検収条件の明確化も確認しましょう。この段階でしっかりと具体的な約束を定めておくことが、後のトラブルを避けるために非常に重要です。

事前に細かく合意しておくことで、納品後の期待値の齟齬が生じるリスクを低減でき、システム開発プロジェクトにおいてスムーズな移行を実現できます。

システム開発の見積もり根拠と妥当性のチェックポイント

システム開発における見積もりで、妥当性をチェックするポイントは以下が挙げられます。

  1. 数字の根拠は正しいか
  2. リスク対応の費用は含まれているか
  3. 管理工数は含まれているか
  4. 調査・分析費用は含まれているか
  5. システム不具合のトラブル対応をしてくれるものか

数字の根拠は正しいか

システム開発の見積もりにおいて、数字の根拠が正しいかという点は極めて重要です。開発作業に必要な時間やリソースを数値化したものであり、その精度がプロジェクトの成否を大きく左右するためです。

数字には、歴史的な成功例や失敗例から得られた知見が反映されており、詳細なドキュメンテーションや信頼できる業界基準に基づいているかをチェックします。妥当性の判断には時間がかかるものの、予測の信頼性が確保し、見積もりにおける誤差リスクを最小限に抑えるためには不可欠です。

リスク対応の費用は含まれているか

システム開発では、見積もりを作成する際に、将来発生するかもしれないリスクへの対応費用の考慮も必要です。プロジェクトには常に予期せぬ問題が発生し、リスクに対処するための追加資源が必要になるためです。

リスク対策には、スケジュールの遅れへの柔軟性を持たせるための費用や、チームの緊急拡大が必要になった際のコストなどが含まれます。想定外の状況に対応するためにも、余裕を持った見積もりかをチェックしてみてください。

管理工数は含まれているか

システム開発の見積もりに管理工数が含まれていないと、実際のプロジェクトコストを過小評価するリスクがあります。管理工数とは、プロジェクトを円滑に運営するための計画立案、進捗管理、品質管理、コミュニケーションといった活動に割かれる時間のことです。

経験則や過去のプロジェクトのデータを参考にしつつ、見積もりの根拠として、管理活動に十分な時間が割り当てられているかどうかを検証することが、予期せぬコスト超過を防ぐ一助となります。

調査・分析費用は含まれているか

システム開発を始める前の初期段階で、要件定義や現状のシステムの理解を深めるためには、十分な調査・分析に費用を用意しているかもチェックポイントです。

例えば、市場分析や技術的検証なしにプロジェクトが進められた場合、未発見の要件変更や技術的な課題が中盤で浮上し、結果的に予算オーバーに陥るケースが考えられます。

したがって、見積もりには、利害関係者のインタビューや競合調査、既存システムの評価など、詳細な調査・分析に対する費用が含まれているかを厳密にチェックする必要があります。

システム不具合のトラブル対応をしてくれるものか

システム開発における見積もりでは、将来発生する可能性のある不具合に対するトラブル対応の計画が重要です。

  1. 対応時間
  2. 対応体制
  3. 緊急時の連絡手段
  4. 継続的なサポートの範囲など

この場合、見積書にはこれらのサービスレベル契約(SLA)の詳細が記載され、それに基づいた十分なリソース割り当てとコスト積算が妥当性の証となります。

見積書と契約書は論争があった場合の重要なエビデンスとなる

ここまでに触れた見積書と、その後に締結する契約書は、発注者と開発業者間の合意内容を明確にし、論争が生じた際の解決に不可欠なエビデンスとなります。

項目 見積書 契約書
目的 作業の範囲や料金を明確にする 法的な合意を表す
内容 作業の範囲や料金の詳細な説明 プロジェクトの範囲、費用、納期、支払い条件などの具体的な記載
効力 法的な拘束力はない 法的な拘束力がある

仮に論争が生じた際には、それぞれの文書が、当初の合意内容を証明する重要な基盤となり、裁判所や調停の場で重要な証拠として機能します。

見積書と契約書は、システム開発に関わる全てのステークホルダーが利益と責任の範囲を理解し、保護するためにもしっかりと確認・用意しておきましょう。

まとめ

システム開発における見積もりは、計画されたプロジェクトの費用と時間を予測するために必要なプロセスです。精度の高い見積もりを実現するためには、適切な情報収集、関係者からのフィードバック、進行中のプロジェクトの確認、そして見積もりの定期的な見直しが欠かせません。

妥当性の確認や精査には時間がかかりますが、予期せぬコスト超過やスケジュール遅延を防ぐためには必要な工程です。要件収集、設計、コーディング、テスト、デプロイなどシステム開発の各フェーズに必要な工数と資源を評価しましょう。