iPadアプリを開発しようと決意するものの、「どの言語や環境で開発すればよいのか、自社で開発するか外注するか…」などの選択は大きな悩みの種です。特に社内にアプリ開発のスキルを持つ人がいない場合、どう進めるべきかの判断も難しいことでしょう。

しかし、判断できないまま進めると、開発スピードが遅くなってしまって移り変わる市場に対応できなかったり、納期に間に合っても費用が大幅にオーバーしたりするなどの課題が山積みとなってしまいます。

そこで本記事では、iPadアプリ開発に必要なプログラミング言語、最適な開発環境、Windowsでの開発方法、そして自社での開発と外部委託の利点・欠点について詳しく解説します。

最後まで読めば、iPadアプリの開発に関して最低限知っておきたい知識を得られ、自社のニーズに合わせた最適な開発方法を判断し、効率的かつコストを抑えたプロジェクトの推進を実現できるでしょう。

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iPadのOSは「iPad OS」

iPad OSとは、OSの中で唯一タブレットで使うことを前提に作られたOSです。iPadのOSは、操作性や見た目だけで言えばiOSと大差ありません。しかし、タブレットの良さを活かせるという点が最大の持ち味でありiOSとの違いです。

例えば、iOSにはない以下の機能が充実しています。

  1. 1つの画面を2つに分割して表示できる(Split View)
  2. Macのサブディスプレイになる(Sidecar)
  3. クイックメモが使える
  4. Pencilデバイスで手書き機能が使える

一般的にユーザーはiPadを含むタブレットに対し、「持ち運びやすい」「パソコンよりも起動が早い」「タッチパネル操作が便利」という利便性を感じています。

つまり、スマートフォンとパソコンの利点を兼ね備えたデバイスがiPadであり、その利便性を高めるために専用で作られたOSがiPad OSといえます。

iPadのアプリ開発に必要な言語

iPadのアプリ開発に必要とされる代表的な開発言語は、以下の5つです。

  1. Swift
  2. Objective-C
  3. JavaScript
  4. Python
  5. Ruby

Swift

Swiftは、Apple社のオープンソース開発言語です。これからアプリ開発に着手する人や、タブレットだけではなくiPhoneやApple Watchなどさまざまなデバイスへの対応も視野に入れている人におすすめの開発言語です。

Swiftの利点は、直感的に開発を進めやすく、通信が発生するアプリの開発にも使えることにあります。今まで、アプリ開発と言えばJavaScriptやRuby、Pythonあたりの言語が主流でした。

しかし、これらの開発言語は学習難易度が高い上に、それぞれ独自のコードを学ぶ必要があります。また、開発を進めるには1つの言語だけではなく言語を組み合わせて使う必要もあったため、アプリ開発の難易度も高いです。

その点、Swiftは1つのアプリで対応でき、学習コスト・開発効率に優れているため、iPad OSのアプリ開発におすすめの言語です。

Objective-C

Objective-Cは、30年以上iOS向けアプリ開発に広く使われてきたオブジェクト指向型の開発言語です。昔からあるアプリケーションのほとんどはObjective-Cに対応しているため、過去の情報を引き出して使うようなアプリを作りたい場合に適しています。

また、オブジェクト指向型であるがゆえに複数人で開発に取り組みやすい、不具合が生じた際に対処しやすいといったメリットも兼ね備えています。ただし、注意したいのはObjective-Cは学習コストが高く、昨今のアプリ開発においては用途が限定的になりつつあるという点です。

iPad OSのアプリ開発に使うのであれば利用用途を明確にしてから使うことと、アプリリリースなど明確な納期があるのなら早い段階から取り入れていくことをおすすめします。

JavaScript

JavaScriptはWebサイトに動的な動きを付けることのできる開発言語です。タブレットの良さを体現させるために欠かせない、以下の動作を実現できます。

  1. ポップアップ
  2. リアルタイムの情報更新
  3. シミュレーション(計算)
  4. チャットボット

どの機能も、ユーザーが求めている検索結果の精度を高めるのに使えます。さらに、情報を補完する機能も備えるため、顧客満足度もアップさせてくれるでしょう。他にも、JavaScriptであれば、1つの言語でアプリとWebアプリをどちらも開発できます。

そのため、ユーザーの多くがタブレットに対して「パソコンレベルの操作をスマホのように手軽にできる」という場合、あらゆるデバイスに対応できるJavaScriptは、開発において大きなアドバンテージとなるでしょう。

Python

Pythonは、データ処理に優れ、コードが比較的シンプルで学習難易度もさほど高くない開発言語です。また、データ収集や分析に強く、ライブラリが豊富で解析によく用いられます。

加えて、メンテナンスもしやすく、どのデバイスでも実行可能な言語であるため、ユーザーニーズを高めることもできるでしょう。

さらに、PythonはアプリにAI(人工知能)を搭載するのに欠かせない開発言語としても知られています。AI機能として広く知られている開発事例には、顔認証や音声認識、ECサイトのレコメンドに代表される最適な検索結果表示などが挙げられます。

iPadアプリの開発に使えば、セキュリティやユーザビリティの向上に一役買ってくれ、さまざまな活用法が見込まれる言語です。

Ruby

Rubyは、Ruby on Railsをはじめとしたフレームワークが充実した日本生まれの開発言語です。シンプルで直感的なコードを書くのが非常に容易であり、コードの可読性も高い特徴を持ちます。

Rubyは、多くのジェムと呼ばれるライブラリやツールが存在し、これにより機能の追加や拡張が容易であることから、iPadアプリの開発にも利用できます。

ただ、直接的にiPadアプリの開発にRubyを使用するのではなく、バックエンドとして使用し、APIを介してデータをフロントエンドのiPadアプリとやり取りする形となるでしょう。

このように、Rubyは日本生まれの開発言語で情報も得やすく、バックエンドをメインとして前向きに取り入れたい開発言語です。

iPadアプリ開発に最適な環境

iPadアプリ開発に最適とされる環境は、以下の4つです。

  1. Mac
  2. Xcode
  3. iPad
  4. iOSシミュレータ

Mac

Macは、iPad OS、iOS向けのアプリ開発ハードウェアとして最も推奨されている環境です。強く推される理由は、iPad向けアプリの開発だけではなく、アプリの公開作業を担う点にあります。

現状、WindowsやAndroidではiOS、iPadOSのアプリ開発はできても最終的なストアへのリリースはできません。AppleのDeveloper Programに登録し、Xcodeを使用してアプリをビルド、署名、そして提出する必要があり、Mac上でしか実行できないからです。

そのため、MacはiPadアプリ開発に最適な環境であり、iPad向けアプリの開発に欠かせない存在といえます。

Xcode

Xcodeは、Appleが提供する複数のデバイスに特化した開発ができる総合開発環境です。iPadはもちろんiPhoneやAppleTV向けのアプリ開発もでき、Apple社製品での利用を前提としたアプリを作る際に非常に有用です。

また、コードを編集するアシスト機能からアプリのテストまで一貫した実行もできることから、より手軽にアプリ開発を行いたいのであればXcodeを習得するのが近道と言えるでしょう。

iPad

iPadアプリ開発には、iPadそのものも活用できます。iPad版のSwift Playgroundsを利用すると、開発環境として機能するためです。

Swift Playgroundsでは、コンパイルと実行、コード補完というようにアプリ開発に必要な作業が可能です。ただし、すべてのアプリ開発に使えるというわけではなく、機能の少ない簡単なアプリにのみ対応しています。

iPadを活用した開発環境は、今後のアップデートでより快適になる可能性はありますが、現段階では開発するアプリの種類が限定的になる点に留意しましょう。

iOSシミュレータ

iOSシミュレータは、Appleの開発者ツールセットであるXcodeに同梱されるアプリのテストを実行する機能です。主に、Mac上で動作し、物理的なデバイスを持たずにテストできます。

主な目的は、開発中のアプリケーションの動作確認であるため、アプリのバグを早期に発見し、修正する際に役立ちます。また、iPhone、iPad、およびApple WatchのモデルやOSバージョンをサポートしていることから、異なるデバイスでの動作まで確認可能です。

ただし、シミュレータはハードウェアのエミュレーションを行わないため、カメラ、モーションセンサー、GPSなどのハードウェア固有の機能はテストできません。

WindowsでiPadアプリを開発するには?

そもそも、WindowsでiPadアプリを開発するには『OSのギャップ』を埋める必要があります。OSが違うとコンピュータもコードを読み込めないため、アプリが作動しないからです。

これから紹介するのは、WindowsでもiPadアプリ開発を可能にするツールです。開発環境を一から整えられない、予算の関係上Windowsで開発に臨む必要がある場合は参考にしてください。

  1. Xamarin Live Player
  2. Multi-Device Hybrid Apps

Xamarin Live Player

Xamarin Live Playerは、iOS環境がなくともWindowsでアプリ開発とテストまでができるクロスプラットフォームです。Xamarinとセットで使われる開発者向けツールであるVisual Studioをインストールすれば、QRコードによるペアリングによって開発環境を整えられます。

また、ネイティブアプリの開発も可能なため、幅広いユーザーに使ってもらえるアプリを目指すならぜひとも押さえておくべきでしょう。

ただし、開発と言ってもコンパイルを含めたテストまでができるだけであり、肝心の公開作業はできないことに注意してください。なお、2024年5月1日にサポートは終了予定で、以降は.NET MAUIに引き継がれます。

Multi-Device Hybrid Apps

Multi-Device Hybrid Appsは、無料の開発フレームワークであるApache Cordovaのサポートツールです。Xamarin同様、Visual Studioを使えばHTMLやJavaScriptを使ったアプリ開発ができます。

具体的には、デバイスを選ばず作動するWebアプリと、アプリ性能を追求できるネイティブアプリのいいところを兼ね備えたハイブリッドアプリが作れます。そのため、アプリ開発のコストを最小限に抑えながら進められるでしょう。

ただし、動作が重いため、ネイティブアプリのようなスムーズな動きは見込めません。また、アプリのテストや実装については、Xcode 5.1のコンパイルかmacOS上のリモートビルド用エージェントを使う必要があります。

アプリ開発の際は自作?外注?

アプリ開発を自社でやるべきか、外注すべきかは、多くの人にとって悩みの種です。「自分たちでやった方がアプリ開発についての知見が貯まる」という意見がある一方で「納期や生産性を重視すれば外注一択だ!」という考えもあり、一概にどちらが正解かは決められません。

ここで大切なのはメリットとデメリットを天秤にかけ、必要に応じて自社開発と外注を使い分けることです。

自社でアプリ開発する 外注してアプリ開発する
開発コストが抑えられる、柔軟な対応が可能、ナレッジやスキルを蓄積できる 納期を守れる、クオリティが上がる
クオリティの担保が難しい、完成の目途が立ちづらい、社内リソースに限界がある コストがかさむ、仕様変更がしづらい、メンテナンス問題

自社でアプリ開発するメリットデメリット

自社でアプリを開発するメリットは、以下の3つです。

  1. 開発コストが抑えられる
  2. 柔軟な対応ができる
  3. ナレッジやスキルが蓄積される

まず、社内リソースを使うため開発にかかるコストは最小限ですみます。また、細かな仕様変更にも対応できるほか、パターンを幾重にも試すこともでき、とにかくこだわりぬいたアプリ開発ができるのが自社開発の強みです。

そのため、アプリ開発を通じたブランディングの強化にうってつけなのは自社開発です。自社開発であれば、自社でアプリ開発に挑めば社内にナレッジやスキルも蓄積されていきます。

これに対し、アプリを自社開発すると以下のデメリットも挙げられます。

  1. クオリティが担保しづらい
  2. 完成の目途が立ちづらい
  3. 社内リソースに限界がある

例えば、アプリ開発について経験のないメンバーであれば、クオリティが下がりやすくなります。また、細部にまでこだわった開発ができるということは、裏を返せばいつまでたっても完成の目途が立たないとも言い換えられます。そして、社内だけでアプリ開発に割ける人員を確保できるかについても不安が残るでしょう。

つまり、十分な社内リソースとコスト、時間をかけられるなら自社開発がおすすめですが、競合他社の動きを意識しなければならない場合やトレンドを逃せない開発なら避けた方が無難といえます。

外注してアプリ開発するメリットデメリット

次に、外注してアプリを開発するメリットは、以下の2つです。

  1. 納期が守れる
  2. クオリティが上がる

まず、アプリ開発を外部に依頼すれば、納期が大きくぶれるようなことはありません。また、意思決定もある程度は外注先がグリップを握ってくれるため、本来の目的をブラさずに開発が進められるでしょう。

そして、なによりアプリ開発に対して豊富な知見を有する外注先なら、高クオリティのアプリを作れます。加えて、最新技術も比較的取り入れやすく、時代のニーズに合ったアプリ開発を実現できます。

一方で、アプリ開発を外注すると以下のデメリットには注意しなければなりません。

  1. コストがかさむ
  2. 仕様変更がしづらい
  3. メンテナンスの問題

外注する大きな難点は、コストの問題です。仕様変更がしづらいことにもつながりますが、細かなオーダーを出せば出すほど依頼内容が変わっていってしまうため、変更に対する手数料や技術料を求められてしまいます。

また、開発後のアプリメンテナンスについてもきちんとサポートしてくれる外注先であるかを確認しておきましょう。

アプリ開発は、公開すれば終わりというものではありません。そのため、アップデートや日ごろの運用保守をどう進めていくかも考えておく必要があり、メンテナンスを請け負ってくれる業者かどうかも下調べしておくと安心です。

iPadを使ってアプリを開発することもできる!

iPadは基本的にアプリを実行するデバイスとしての役割を担っていますが、開発言語や環境を整えればiPadのアプリ開発も可能です。iPad OSでのアプリ開発については、タブレットの利便性や有用性を加速させるアプリを作るということを意識すると良いでしょう。

また、今まで接点のなかったユーザーにアプローチできるだけではなく、既についているファンの顧客満足度も上げられ、ブランディングの強化にも繋がります。人的・時間的な余裕があれば自社開発もおすすめですが、いち早く世の中にアプリリリースを考えるならコストがかかっても外注を選ぶ選択肢も持っておきましょう。